数ならぬ

理学系のこと、特に数学について書きます。雑学的な知識もまとめていく所存。

二次方程式の解の公式を丁寧に理解する

 拝啓、二次方程式の解の公式を覚えたくない人へ。

 

 覚えてください。

 

 敬具

 

 別にふざけているわけではない。二次方程式の解の公式は高校数学でも普通に使う、常識のようなものである。なので、覚えてください。

 

 とは言っても、覚えるだけではその本質が理解できず、二次方程式ブラックボックス化してしまうのも事実である。

 なので、二次方程式の解の公式を丁寧に導出してみた。これで多分ほとんどの人には納得して暗記してもらえるだろう。

 

 初めに知っておくべきは展開公式である。展開公式は次のような式である。

展開公式
(x+y)^2=x^2+2xy+y^2

 -yの公式がないじゃないか、と言われても困る。あの式は別に必要なものではない。ただ思考を楽にするための補助公式である。この和の公式こそ、根源的な道具である。ただ、この和の公式も二次方程式の解の公式を導出する上で少々使いづらい。よって次のように改変する。

展開公式
(x+a)^2=x^2+2ax+a^2

 右辺がちょっと二次方程式っぽい形になったことに気づいただろう。これは最初に提示した展開公式では見えづらかった部分だ。それをただ積を入れ替えただけで明確にできた。交換法則に感謝せよ。

 このような変形を日本語で解釈すると次のようになる。

 

 (x+何か)^2というのを展開すると、x^2+何かの二倍x+何かの二乗

 

 xの前の数が「何か\times 2」となっていることが重要である。

 

 ここで、我々に与えられた道具は何か考えてみよう。まず、四則演算は当然可能である。また、平方根を取る操作も許容されているだろう。そうでないと、そもそもx^2=aすら解けない。

 ということで、我々は四則演算と平方根を取る操作を有限回行って、方程式を解かなければならない。

 

 二次方程式は一般のax^2+bx+c=0,a\ne 0を考える。この二次方程式の左辺を今までの道具を使って変形していく。

 

 まず、わかりやすいように両辺をaで割る。すると二次方程式x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{c}{a}=0のようにx^2の前の数を1にすることができる。

 続いて、この方程式を展開公式を真逆に使って二乗の形でまとめる。展開公式は(x+A)^2=x^2+2Ax+A^2だった。2A=\dfrac{b}{a}となるようにAを取ると、A=\dfrac{b}{2a}である。これを展開公式に代入すると、\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2=x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{b^2}{4a^2}

 

 この式をx^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{c}{a}に近づけるために、両辺に-\dfrac{b^2}{4a^2}+\dfrac{c}{a}を足す。すると、\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2-\dfrac{b^2}{4a^2}+\dfrac{c}{a}=x^2+\dfrac{b}{a}x+\dfrac{c}{a}が導ける。

 すると、解くべき二次方程式\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2-\dfrac{b^2}{4a^2}+\dfrac{c}{a}=0となる。-\dfrac{b^2}{4a^2}+\dfrac{c}{a}の部分は定数なので、右辺に移項するのが良いだろう。すると、

\bigg(x+\dfrac{b}{2a}\bigg)^2=\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{c}{a}

が導ける。この方程式のx+\dfrac{b}{2a}yとおくと、実はこの方程式はy^2=\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{c}{a}というx^2=a型の簡単な二次方程式だったことがわかる。\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{c}{a}< 0だと実数の解を持たないので、\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{c}{a}\ge 0のときを考える。

 

 x^2=a型の方程式の解は\pm\sqrt{a}だったことを思い出すと、y=\pm\sqrt{\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{c}{a}}であり、y=x+\dfrac{b}{2a}を用いて、xの式にすると、x=-\dfrac{b}{2a}\pm\sqrt{\dfrac{b^2}{4a^2}-\dfrac{c}{a}}

 平方根の中をまとめると、x=-\dfrac{b}{2a}\pm\sqrt{\dfrac{b^2-4ac}{4a^2}}

 \sqrt{x^2}は外すのが少々手間であることはよく知っているだろう。\sqrt{(-1)^2}=1となるように、\sqrt{x^2}=|x|が成り立つ。ただし、|x|というのは絶対値と呼ばれる、マイナスをプラスの大きさが同じ数に、プラスはそのままにする記号である。

|-2|=2,|3|=3,|0|=0

 この公式を使うと、x=-\dfrac{b}{2a}\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{|2a|}

 絶対値の前にある\pmの記号に注目すると、|2a|がどのように外れようと、その符号分を\pmが吸収してしまうことがわかる。例を挙げればわかりやすいだろう。

a=-2のとき

a=-2のとき、|-2|=2であり、符号が変化する。しかし、\pm|-2|を考えているとしたら、絶対値を外すと\mp2となって、

今考えている符号は正負の選び方が自由なので結局やっていることは変わらない。

 つまり、分母にある絶対値記号は外せるということである。なので、x=-\dfrac{b}{2a}\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}が導かれる。

 これをまとめてやると、x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

 これが解の公式である。お疲れ様でした。

二次方程式の解の公式

a\ne 0,\hspace{1mm}ax^2+bx+c=0の解の公式は、

x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

 

 

 

 

 

 

 裏ステージ

 この求め方も十分に面白いものだったが、もっと本質的な考え方がある。それが解と係数の関係を用いる方法である。

二次方程式の解と係数の関係

a\ne 0\hspace{2mm}ax^2+bx+c=0の解を\alpha ,\betaとおくと

\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a}

\alpha\beta=\dfrac{c}{a}

 この定理は解の公式に依存しないで証明することができる。

 ここでちょっと唐突だが、(\alpha-\beta)^2を解と係数の関係を使って求めてみよう。(\alpha-\beta)^2=(\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta=\bigg(\dfrac{b}{a}\bigg)^2-\dfrac{4ac}{a^2}=\dfrac{b^2-4ac}{a^2}

 これに対して平方根を取ると、\alpha-\beta=\pm\sqrt{\dfrac{b^2-4ac}{a^2}}

 前にしたのと同じ議論で、\alpha-\beta=\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{a}が得られる。

 \alpha+\beta=-\dfrac{b}{a}であるので、\alpha=-\dfrac{b}{2a}\pm\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\beta=-\dfrac{b}{2a}\mp\dfrac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}の二つが得られる(複合同順)

 どのように符号を選んでも得られる解は\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}となるので、解の公式が導けた。