別にロマンチックな話をするわけではないが、大層なタイトルをつけてみた。私はこの間初めて知ったのだが、香道と呼ばれる日本の伝統的な趣味があるようだ。私が知っている道は茶道、華道、剣道、柔道くらいのものだったので、大変に驚いたものである。
その香道の中でも一際ロマンチックな競い合いがある。それが源氏香である。以降、香の匂いを嗅ぐことを香道に倣って「聞く」と表現する。
競い合いと言っても単純であり、参加者は、五種類の香を五本の線として表しその五種類が順番に炷 かれていくのを聞き、匂いが同じだと思った香を表す線同士の頭を繋ぐ。たったこれだけである。たとえば番目と
番目、
番目と
番目に炷かれた香の匂いは同じで、
番目だけはどれとも違う香りだというとき、次のような図になる。

この図のことを香図と呼ぶ。なかなかおしゃれなマークになったではないか。この香図にはそれぞれ名前がつけられていて、その名前は香図は種類あることから全
帖存在する『源氏物語』のそれぞれの帖に由来する。上の図は第
帖の『椎本』に由来する。
ここで数学的思考が芸術鑑賞を邪魔するわけだ。「ん?通り香図があるらしいけれど、それってどうやって数えるんだろうか?」というようにである。いくらなんでも三條西実隆、志野宗信、足利義政に失礼だ。実際、室町幕府
代将軍も香道にどっぷりと浸かっていたようである。日野富子にどつかれながら執り行っていたのだろうか。そこら辺は歴史に無知な私にとってわからないことである。
さて問題を今一度述べておこう。
この問題は時間の十分あったであろう平安時代の人間などには簡単なことだろうが、我々にとっては難しい問題である。ということで次のような言い換えをしてみよう。
五本線の頭を繋ぐことを、グループ分けする、と言い換えただけである。この問題を解決するためには一般化をすることが重要である。次のような概念を導入する。
正直に言おう、また漸化式を立てる。次のような漸化式が成り立つ。
このとき、この残りの元をグループ分けする場合の数は
これを
この和の取り方を少し変えて、二項係数の公式
また証明からわかるように、と定義している。これにより
がわかる。求めたいのは
であったのでそこまで頑張って漸化式を使って計算していくと、
というようにが示された。
は香図を一般化して線を
本にしたときにありえる組み合わせの場合の数ということになる。これ以降
本の線を持った香図を
香図と呼ぶ。
香図の組み合わせ方は203通り存在するので香図に名前をつけるとしたら、まあ漫画から名前を取るしかないのではないか。ちょうど
もしくは
エピソードで最終回を迎える漫画があったらご一報ください。
香図になると、
通りの組み合わせが存在する。人間の創作力ではかなり厳しくなってきた。
香図になると、
通りである。『失われた時を求めて』の原文のページ数が
ページほどなので「最も長い小説」のページ数で名前をつけようと思っても足りない。
やはり通常の香図が一番収まりが良い。『源氏物語』から名前を取るという発想ができたことは、香道を嗜む人間にとって『源氏物語』は身近なことであったことの証左ではないだろうか。