数ならぬ

理学系のこと、特に数学について書きます。雑学的な知識もまとめていく所存。

72の法則と対数関数

 金融の法則で、72の法則なるものがあるらしい。

 

72の法則
複利において利子をr%とおくと、元の金額から二倍の金額になるまでにかかる期間は大体\hspace{1mm}\dfrac{72}{r}\hspace{1mm}である

 

 これは複利の考え方がわかっていれば簡単に導ける法則である。次のように条件を設定する。

 

条件設定
A>0の価値のものに複利で利子r%>0をつける。利子は単位時間あたりにつくものとする。

 

 単位時間というのは一月でもいいし一年でもいい。とにかく考えている時間の感覚である。であるので適当な整数で時間を代用してもいい。1ヶ月を1と表してもいいし、1年を1と表してもいい。

 このような離散的な問題には数列で漸化式を求めてやるのが定石である。

 

定義1数列a_nの定義
a_nを時刻nにおけるAの価値のものの利子つきの価値であるとする

 

 この定義から、即座にa_0=Aが従う。

 また、求めるべき時間を次のように定義する。

 

Nの定義
a_n\ge 2Aを初めて満たすようなnNと書く。

 

補題1a_nの漸化式
a_{n+1}=\bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)a_n

 

Proof
Sの価値があるものは単位時間すぎると\bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)となる。であるから、a_{n+1}=\bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)a_nが成り立つ◽︎

 

 この補題から、等比数列の一般項の公式を使うことで、a_n=\bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)^n Aであることがわかる。この式からNを求める。

 

定理1精密版72の法則
n\ge \dfrac{\ln 2}{\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)}となる最小のnが求めるべきNである

 

Proof
\bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)^n A\ge 2Aを考えると、この式は
\bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)^n\ge 2と同値である。両辺に\lnを取ると、n\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)\ge\ln 2という不等式が導かれる。これを整理するとn\ge\dfrac{\ln 2}{\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)}◽︎

 

 ここで\dfrac{r}{100}はそこまで大きくならないので、0に近いと思えて、次の近似が使える。

 

\ln xの一次近似
\ln x\approx 1+x

 

 もはや近似をしたので定理とは呼べないが以下の事実を便宜上定理と呼ぶ。

 

69の法則
N\approx \dfrac{100\ln 2}{r}\approx\dfrac{69}{r}

 

Explanation
n\ge\dfrac{\ln 2}{\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)}に対して、\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)\approx\dfrac{r}{100}を用いれば良い。また\ln 2\approx 0.69を用いると最右辺が説明できる

 

 ここでln (1+x)\leq xが成り立っていることから、\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)\leq \dfrac{r}{100}が成り立つこともわかるので、\dfrac{\ln 2}{\ln \bigg(1+\dfrac{r}{100}\bigg)}\ge \dfrac{100\ln 2}{r}>\dfrac{69}{r}
この不等式により\dfrac{69}{r}によってNの下からの評価が得られる。またこの69に下駄を履かせてやって72としてやると\dfrac{72}{r}とかける。この72という数字を選んだ理由は72の約数が1,2,3,4,6,8,9,12,18,24,36,72と多いからだと言われている。別に69でもいいような気がするが\cdots\cdots
また式の形を見るとAに依存しないことがわかる。これは微分方程式でも同じような話題が出てきてそのアナロジーとも思える。

 この式を使って次のような問題について考えてみる。

 

72の法則を用いた計算
100円を月利r=0.1%のもとで放置したとき、約何ヶ月で二倍の価値になるだろうか

 

Proof
72の法則より、\dfrac{72}{0.1}=720ヶ月◽︎