数ならぬ

理学系のこと、特に数学について書きます。雑学的な知識もまとめていく所存。

二項定理まとめました。

 残暑が終わったと思ったら急に冷え込み、秋なのに秋にはあらねどと言った感じの天候である。近くの植木通りに植えられた銀杏が実を落としてそれが脳天に直撃したことをこの場で報告しておく。

 

 この話は今回の話題に全く関係ない。本題に入ろう。中学生の頃、次のような公式を習うことになっている

 

定理1和の自乗の展開
(x+y)^2=x^2+2xy+y^2
(x-y)^2=x^2-2xy+y^2

 

 この公式は実際には全く覚える必要はないが、しかし覚えていた方が計算や式の整理などが素早くできて得である。一応証明も載せておこう。分配法則が理解できていれば頗る簡単である。

 

Proof
上の式だけ示す。下の式は上の式をy\mapsto -yとおけば手に入るだろう。
(x+y)^2=(x+y)(x+y)=(x+y)x+(x+y)y=xx+yx+xy+yy=x^2+2xy+y^2◽︎

 

 わざわざ掛け算の順序を一時的に交換しなかったのには理由がある。それはこの定理の一般化である二項定理を理解するために重要なポイントが潜んでいるからだ。

 ここで、組み合わせ論の概念を導入しよう。

 

定義1二項係数
n個の異なるものからk個を取り出す時の場合の数を _n C_kと書く。

 

 この概念を導入することで今後の議論がしやすくなる。さて、一般化ということで次のような問題を考える。

 

和のn乗の展開
(x+y)^nはどのように展開されるか

 

 いきなりn乗で考えるのはちょっと荷が重いので、3乗くらいを考えてみよう。すると、次のような公式が得られる。

 

定理2和の3乗の展開
(x+y)^3=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3

 

Proof
(x+y)^3=(x+y)(x+y)(x+y)
=(xx+xy+yx+yy)(x+y)
=xxx+xxy+xyx+xyy+yxx+yxy+yyx+yyy
=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3◽︎

 

 この証明によって、(x+y)^nの展開について考察ができる。

(x+y)^nの展開はn個の(x+y)から一つずつ文字を選ぶことで達成できる。であるので、(x+y)^4などは
xxxx+xxxy+xxyx+xyxx
+yxxx+xxyy+xyyx+xyxy
+yxxy+yxyx+yyxx+yyyx
+yyxy+yxyy+xyyy+yyyy
のように展開できる。掛け算の交換法則を使うと項をいくつかの種類にまとめられる。x^4は異なる4つのものから4つ選ぶ時の組み合わせで係数 _4C_4が導ける。
x^3yの係数は異なる4つのものから3つ選ぶときの _4C_3という場合の数に等しい。
このように、x^ky^{n-k}という項の係数はn個ある(x+y)からxk個選ぶ組み合わせ _nC_kに等しい。

 

定理3二項定理
\displaystyle (x+y)^n=\sum_{k=0}^n {}_nC_k x^k y^{n-k}

 

Proof
(x+y)^nにあるx^k y^{n-k}の係数を考える。これはn個の異なるものからk個のものを選び出す場合の数に等しい。かくして示された◽︎

 

 _nC_kを計算できないと意味がないので、_nC_kを計算する方法を考える。次のようにステップを踏んで計算していく。

 

定義2階乗
n!\stackrel{\mathrm{def}}{=}n\cdot(n-1)\cdot(n-2)\cdot\cdots \cdot2\cdot1

 

 3!=3\times2\times1=6のように定義する。より形式的には
a_{n+1}=(n+1)a_n\hspace{1mm}, a_0=1
と定義したa_nを階乗と呼ぶ

階乗の組み合わせ的な意味を考える。これは異なるn個のものをn個抜き出して並べる時の並べ方の総数である。たとえば机の上 にりんご、バナナ、ぶどうがあったとして、これを一列に並べることを考える。

 

リンゴとバナナとブドウの絵

 

 このとき、6通りの並べ方があることを説明しよう。

 りんごを乗っける一つ目の皿は三通り存在する。バナナを乗っける二つ目の皿は二通りである。ぶどうにはもう一つしか皿は残されていない。なので一通りである。よって3\times2\times1通り

 また、果物を皿に乗っけると考えるのではなく、皿に果物を割り当てるような気持ちでもこの場合の数は導けて、こちらの考え方の方が次の順列には対応しやすい。

 一つ目の皿に乗っける果物は三種類ある。二つ目の皿に乗っける果物は二種類ある。最後の皿に乗っける果物は一種類しかない。よって3\times2\times1通り

 

 続いて、この階乗の一般化となる順列の総数を見ていこう。先ほどはn個の異なるものがあったら、それを全て並べていたが、今度はそこからk個だけ取り出して並べてみることにする。

 

定義3順列
n個の異なるものからk個取り出して並べるときの場合の数を_nP_kと書き表し、これを順列の総数と呼ぶ

 

 階乗の意味合いから考えるに、次の定理が成り立つことは妥当である。

 

定理4_nP_kの計算
_nP_k=\dfrac{n!}{(n-k)!}

 

Proof
_nP_kの定義により、_nP_k=n\cdot(n-1)\cdot(n-2)\cdot\cdots\cdot (n-k+2)\cdot (n-k+1)
これは\dfrac{n!}{(n-k)!}に一致している◽︎

 

 少し言葉を端折ったので補足をしておく。_nP_kの定義より以降の積は次のように導かれる。

 n個の中から一つ選ぶときの場合の数はn通り

 その後にn-1個から一つ選ぶときの場合の数はn-1通り

 \cdots

 n-k+1個から一つ選ぶときの場合の数はn-k+1通り

 積の法則により、これらを掛け合わせると順列が得られる。

 

 この順列からようやく二項係数が求められる。次の定理が成り立っている。

 

定理5二項係数の計算
_nP_k=k!{}_nC_k

 

Proof
組み合わせ論的に証明する。_nC_kでまずn個から k個取り出す。そしてこのk個を全て並べることで_nP_kが表す操作と同じになる。よって_nP_k=k!{}_nC_k◽︎

 

 証明の取り出し方は次の例で理解できる。

 

1証明の例
X=\{1,2,3,4\}という集合から3個選ぶ時のの順列の総数を求めてみよう。
まず、定義からこれは_4P_3である。次に_4C_3の定義を用いる。これは順序を考慮することで3!倍増える。取り出したものをぐちゃぐちゃと並び替えて順列を得ているイメージだ。実際に_4C_3に含まれている集合はたとえば\{1,2,3\}があるが、ここから全て取り出して並べる時(1,2,3),(1,3,2),(2,1,3),(2,3,1),(3,1,2),(3,2,1)6つの順列が得られている。

 

 さらに、定理4,5を組み合わせることで以下の系がえらえる。

 

定理6二項係数の具体的な計算
_nC_k=\dfrac{n!}{k!(n-k)!}

 

Proof
定理4より_nP_k=\dfrac{n!}{(n-k)!}で、定理5より_nC_k=\dfrac{{}_nP_k}{k!}であるのでこの二つを合わせると、_nC_k=\dfrac{n!}{k!(n-k)!}が得られた◽︎

 

 以上でこの記事を終了する。と思っていたのか。一般化が二項定理には存在するから、それだけ紹介する。証明は、と思うかもしれないが、なかなか大変なので、今回は見送りという形で\cdots\cdots

 

一般化二項定理
\alpha \in \mathbb{R}\hspace{4mm} x\in (-1,1)とする
\displaystyle (1+x)^{\alpha}=\sum_{n=0}^{\infty} {}_\alpha C_n x^n

 

 上の式は本当に美しい式だと思う。この式の詳細な読み方はまた後日学ぶが、たとえば\sqrt{1+x}なんかが二項定理と似たような形で展開できるというのは驚きの事実である。