これから群論について書こうと思っているので、そこで現れる数々の抽象的な用語に対応するべく、この記事を書く。と言ってもそこまで難しくないので、欲でこの記事を書いていると思ってもらって構わない。
例えば以下のようなものでも演算である。
というふうに定義すると、これは
結局のところ人間がどれだけ扱いにくくても条件を満たしていれば演算は演算である。また、二項演算においてはその演算の対象となる数が二つであるので、中置記法というものが多く用いられる。
以降、ありがたく二項演算はと中置記法で略記する。
演算を定めたわけだが、病的な例でも見たように、人間にとって扱いにくいものでも演算となるので、人間が扱いやすいと思えるような性質を抽出しておこう。
まず、真っ先に思いつく演算の性質は「結合法則」や「交換法則」だろう。ということでこの二つを定義しよう。
この世に交換法則を満たさないような二項演算は数多くあれど、結合法則すら成り立たないような二項演算は少ない。なんせ写像すら合成で結合法則を満たすのだから。
ということで、交換法則の方が重要そうに見えるけれども、結合法則の方が結構成り立つことが多いというのが代数学あるあるでした。結合法則を愛せ、交換法則を好め。
ここで、なぜ結合法則を二項演算が満たしてくれると嬉しいのか考えてみよう。普段三つ以上の数の足し算が出てきた時、我々は別にそれらを括弧で括らない。
なぜならどこから演算しても答えは一致するからである。
しかし結合法則を満たさないような演算ではそのようなことはできない。以下の例を見てほしい。
この上の二項演算
というふうに定義する。
ここで、結合法則が成り立っていないことに注意する。
このとき
要するに括弧を省略したいなら、結合法則が必要だということだ。
今までは全体の性質としてこういう法則が成り立つというある意味マクロ的視点に立って見てきたが、これからはミクロ的、要するにこういう性質を満たす要素が台集合にある、という形の法則を見ていこう。
つまりの中に
のように共に演算した数を変えないような元が存在することを表している。両側単位元は特に「左側単位元」かつ「右側単位元」である元と言える。また両側単位元のことを単位元と言っても、文脈によるが大抵の場合許される。
続いて両側単位元を持つことを前提にした定義をする。これはいわゆるマイナスや逆数の概念である。
さて、今まで考えてきたのは二項演算であるが、二項係数に対して多項係数が存在するように、二項演算に対しても多項演算が存在する。ただし、多項係数とは違い、かなりマニアックなものとなる。
三項演算の例などを出すのは面倒だが、例えば二項演算について
は三項演算になっている。
今までは演算のことに重点を置いていたが、今度からは「関係」に重点を置いて説明をしよう。関係というのは演算とよく似た定義がされる。
二項関係の集合に入っている元に関係が定義されているということだが、これまたわかりにくいので例を出して説明する。
上の例が納得しがたかったのは、関係することの対称性が失われていたためである。つまりと
は関係するけど
と
は関係しない、という言葉が気持ち悪いのである。関係と言い張るくらいだったら、
と
が関係するなら、
と
も関係する、くらいのことは成り立っていてほしい。それが成り立っているのが等号である。
二項関係というのは今まであった関係の性質を抽象化したものであるので自然な例を出すことで性質のいい二項関係がどのような性質を満たしているのかを知ることができる。
等号の有名な性質として次の三つの性質がある。
そもそも等号が我々にとっていい性質を持つのは当然のことである。なぜなら等号というのは幼い頃から携わってきた数学記号の一つだからである。
上で与えられた三つの性質に名前をつけてみよう。上から、関係が自分に跳ね返ってきているから反射律、関係に対称性があるから対称律、二つの等号関係を推移するように見えるから推移律と名付けてみよう。
これら三つの性質の反例を作ろう。
ここで、この三つを同時に満たす等号もどきに対する用語を定義する。
ここで表記を簡潔にするために演算の時と同じような中置記法を導入する。
同値関係を満たすような身近な例はやはり等号であるが、それだけではつまらないので変な例を示す
これが同値関係であるということを証明する。反射律
反射律は
対称律は
推移律を示す。
上で定義した同値関係について考える。例えばと同値関係が成り立っているのはどの元だろうか。この問題は前に定義した
の記法によって書くと
を満たすような
を求める問題に書き直せる。これは三次方程式
を解く問題に帰着される。
このように元に対して
を満たす元
が気になるというのは極々自然な考えである。そのために等号の代わりに同値関係を定めたのではなかったか。この考えは次のように一般化される。
同値類は先ほどの同値関係の例を出すとというように同値関係が成り立つような元を集めたものである。同値類の一般的な性質として次のことが成り立つ。
を同値類によって分解して、その分解したかけらを再構築することを考える。要するに、同値類の区分けを残して
を復活させる。この概念はとても重要であり、さまざまな分野で使われる
商集合には元の集合からの全射が定まる。
群論に入る上で最も重要な考え方を予習しておこう。群論は構造によって物事を分けていく学問なので、見た目は気にせずに構造だけに注目したい、というモチベーションが沸々と湧き上がってくる。そこで使われるのが同型という考え方である。
同型であるということは直観的には、ラベルが違うだけで構造的には全く同じということを表している。以下の例を参照せよ。
よく目を凝らせば、関係と
は言っていることが同じであることに気づくだろう。具体的な元の見た目を無視して、関係だけに着目する上手いやり方が同型なのである。