数ならぬ

理学系のこと、特に数学について書きます。雑学的な知識もまとめていく所存。

無平方数であり、かつ完全数となるような自然数は6以外に存在するか?

 完全数というのは魅力的な対象である。おそらくこのブログを観に来るような人は大抵数学好きであるから定義を知っているだろうが、一応私はブログをself-containedにするように心がけているので、定義を入れておこう。

 

完全数の定義
自然数の中でも、そのの約数の和が自身の二倍となるような数を完全数と呼ぶ。

 

完全数の例
6は完全数である。なぜならその正の約数は\{1,2,3,6\}であり、その和は12=2\times6であるからだ

 

 キリスト教的には6は神の数字7には一つ足りない不完全さの象徴として現れているらしいが、実際には6完全数である。まあ天地創造6日で行われたらしいので\cdots\cdots

 さて、完全数は偶数であれば特定の形をしていることが証明されている。それはメルセンヌ素数とのつながりでご存じの方も多いだろう。一応記事内でも示しておこう。そうそう完全数についての記事は書かないと思うので、思い立ったが吉日というやつだ。

 

偶数n完全数である\Longleftrightarrown=2^{p-1}(2^p-1)
ただし、2^p-1素数

 

Proof
\Longleftarrowは紀元前くらいにユークリッドによって証明されていたようだ。さすがユークリッドである。証明はこの形が与えられていたのならすこぶる簡単である。

 

\sigma (n)の定義
\sigma (n)nの正の約数の総和として、これを約数関数と呼ぶ

 

約数関数の値を求める公式
\displaystyle n=\prod_{i=1}^kp_i^{e_i}素因数分解されていたとする。このとき\displaystyle \sigma (n)=\prod_{i=1}^k \dfrac{p_i^{e_i+1}-1}{p_i-1}

 

Proof
\displaystyle n=\prod_{i=1}^kp_i^{e_i}素因数分解されているとき、nの正の約数はn=\prod_{i=1}^k p_i^{d_i},(d_i\leq e_i)と書ける。正の約数の和において、p_1の指数が同じである項をまとめる。すると\sigma(n)=(1+p_1+p_1^2+\cdots+p_1^{e_1})\sigma \bigg(\dfrac{n}{p_1^{e_1}}\bigg)とかける。以下同様に繰り返すと\displaystyle \sigma (n)=\prod_{i=1}^k (1+p_i+p_i^2+\cdots+p_i^{e_i})が得られる。<br/ >これを等比級数の和の公式を用いて変形すると、\displaystyle \sigma (n)=\prod_{i=1}^k \dfrac{p_i^{e_i+1}-1}{p_i-1}◽︎

 

m,nが互いに素な正整数であるとすると\sigma (mn)=\sigma (m)\sigma (n)

 

 この定理をうまく利用する。\sigma (2^{p-1}(2^p-1))\stackrel{\mathrm{系により}}{=}\sigma (2^{p-1})\sigma (2^p-1)

このとき、\sigma (2^p-1)=1+2^p-1=2^p\sigma (2^{p-1})=2^p-1が成り立つので、\sigma (2^{p-1}(2^p-1))=2^p(2^p-1)=2\times2^{p-1}(2^p-1)=2nが成り立つ。

 

 \Longrightarrowオイラーが証明した。またしてもさすがと言わざるを得ない。千年ほどの時を超えて完全数は二人の数学者を結びつけるのである。

 n=2^sN,Nは奇数とかける。この時nが偶数であるという仮定により、1\leq sが成り立つ。\sigma (n)=\sigma (2^s\times N)=\sigma (2^s)\sigma(N)=(2^{s+1}-1)\sigma (N)
 とn完全数であるという事実から\sigma (n)=2nが成り立つ。これらの等式を結ぶと
2^{s+1}N=(2^{s+1}-1)\sigma (N)が導かれる。

ここで2^{s+1}N=(2^{s+1}-1)\sigma (N)より\dfrac{\sigma (N)}{2^{s+1}}=k\in\mathbb{Z}が成り立つ。これを元の式にも代入すると、N=(2^{s+1}-1)kが成り立つことがわかる。
 仮にk>1が成り立つとしよう。この時Nの約数には少なくとも1,k,k(2^{s+1}-1)があることから
 \sigma (N)\ge 1+k+k(2^{s+1}-1)=1+\sigma (N)がわかる。よってk>1としたのが誤りであり、k=1であることがわかる。
 この事実から\sigma (N)=2^{s+1}=2^{s+1}-1+1=N+1が成り立つことがわかり、\sigma (n)=1+nを満たすようなnは必ず素数であることが\sigma (n)-n=1という変形によりわかる。よって2^{s+1}-1素数かつn=2^s(2^{s+1}-1)がわかった◽︎

 

 途中で存在する2^n-1型の素数メルセンヌ素数と呼ばれるが、メルセンヌ神学者でもあった。彼が完全な数に自身の考案した数が組み込まれていることを知ったらどう思うだろう。私だったらとても言葉では言い切れない畏敬と感動を抱くだろう。

 さて、偶数の完全数についてはどんな形をしているのかがわかった。しかし奇数についてはどうだろう。我々人類はどのような奇数が完全数となるのかはわかっておらず、そもそも奇数の完全数の存在も定かではない。

 つまり、完全数全体はあまりよくわかっていないのである。今回は無平方な完全数6以外に存在するかどうか議論したいと思う。

 

無平方数
自然数nが無平方であるとは、n素因数分解したときの全ての素数の指数が1以下であることと定義する

 

無平方数の例
6=2\times3,15=3\times5であるので6,15は無平方数である。それに対して12=2^2\times3素因数分解され、素因数2の指数が2であるので無平方数ではない。

 

 無平方数で完全数になるものを求めてみよう。まずは具体的なケースから証明してみる。ただし、これ以降n素数であるようなケースは扱わない。なぜなら、\sigma(n)=1+nとなり、1<nでは1+n<2nが成り立つからである。

 ということでまずは異なる素因数が二つであるような無平方数が完全数になるようなケースを考える

 

異なる二つの素因数を持つ無平方数の完全数
p,qを異なる素数としてn=pqとしたとき、n完全数となるようなp,qの組み合わせはn=6となる組み合わせに限られる

 

Proof
p<qを仮定しても対称性より一般性を失わない。pq完全数であるのならば(1+p)(1+q)=2pqが成り立つことがわかる。p,qが奇数の時を考えると、左辺は4の倍数となり、p,qはどちらか一方が2となってしまうので前提に矛盾する。よってp=2がわかる。3(1+q)=4q
q素数であるので、q=3である必要がある。よって2\times3=6に限られる◽︎

 

 次に三つの素数からなる無平方数の完全数を求める。

 

異なる三つの素因数を持つ無平方数の完全数
p,q,rを異なる素数としてn=pqrとしたとき、n完全数となるようなp,q,rの組み合わせは存在しない

 

Proof
対称性によりp<q<rとしても一般性を失わない。n完全数であることから等式(1+p)(1+q)(1+r)=2pqrが導ける。
ここでq,rは奇数であることから、(1+q)(1+r)4の倍数となる。つまり両辺は4の倍数であり、特にpqrは偶数であることが導ける。p<q<rより偶数となりうるのはpのみである。よってp=2
これを元の式に代入すると、3(1+q)(1+r)=4qr
この式から明らかなように、右辺は3の倍数である。よって、q<rからq=3が導ける。これを再び代入すると、12(1+r)=12rが導けて、12=0が成り立つことが示せてしまう。
よってn完全数になることはない◽︎

 

 そしてこの後4\leq kとしたとき、k個の素因数を持つような無平方の完全数について考える。

 

k個の素因数を持つような無平方の完全数
k\ge 4とする。n\displaystyle n=\prod_{i=1}^k p_i素因数分解されているとする。この時n完全数にならない

 

Proof
背理法により示す。n完全数であるとすると、等式
\displaystyle \prod_{i=1}^k (1+p_i)=2\prod_{i=1}^k p_i
が成立する。ここでp_1<p_2<p_3<\cdots<p_kとしても対称性によって一般性を失わない。偶数になりうるのは大小関係によりp_1のみであり、その他は全て奇数となる。よってそれに1を加えたものは当然偶数になる。よって
\displaystyle \prod_{i=1}^k (1+p_i)=2\prod_{i=1}^k p_i
の左辺は2^{k-1}の倍数である。ここから特に、\displaystyle \prod_{i=1}^k p_i2^{k-2}の倍数であることがわかる。4\leq kより少なくとも4の倍数である。これはp_2,p_3,p_4,\cdots,p_kのなかで二つ以上の数が偶数でなければ成り立たないことであるが、そんなことは起こらない。よってn完全数ではない◽︎

 

 この証明からわかる通り4\leq kでは明らかな矛盾が発生してしまう。しかしk\leq 3ではこの証明は使えないことも同時にわかる。\displaystyle \prod_{i=1}^k p_i2^{k-2}の倍数になったとしても矛盾が生じないからである。幸いにもウォームアップだと思っていたことが場合わけの全てを潰していたのである。これらの定理群を合わせると欲しかった次の定理が得られる。

 

無平方完全数
無平方数で、かつ完全数であるような正の整数は6に限られる