今も時たまやることではあるが、幼い頃から階段を一段飛ばしで上るのが楽しかった。今考えるとちょっと滑稽だが、階段を一段飛ばすことで漠然と決められた生活のルールみたいなものを破っている気分になれたからである。
そんな話は、結局は数学の話に帰着される。数学において次のような有名問題がある。
なかなか面白そうな問題である。例えば段の階段を上ることを考えてみよう。

下手クソな絵で申し訳ないが、下の人が頑張って階段を上っていく様子を想像してほしい。
まず、素直に段ずつ着実に上っていく場合があるだろう。

そのほかに段飛ばしを入れてみたり、

全部段飛ばしを使って上る場合もある。

とまあ、色々な上り方を合わせて最終的な場合の数は通り存在する。ただ、これはあくまで
に4を入れてみた場合の具体例にすぎない。これをどうやって一般的に求めるのかが難しいところである。ここで、漸化式を用いて問題を分割する。
こうして数列を置くことで我々は漸化式という超強力な武器を使うことができるようになるのだった。ここで、を再帰的に数えよう。
(i)一段上って踊り場に着く
(ii)一段飛ばしで踊り場に着く
(i)のとき、踊り場に着く前には
(ii)のとき、踊り場に着く前には
これら(i)と(ii)の場合は排反であるので足せば
異国の地で友人に会ったときのような安心感すら覚える。なんやお前、ここにもおったんか
このことは気にせずに一旦一般化した数列を考えてみよう。異国にまさか友人がいるはずはない。きっと幻覚である。
一般化した問題を考える上で断っておきたいことがある。それは一段飛ばしという名称、やめませんか?ということである。一段飛ばしすると階段は二段進んだことになる。これはちょっとわかりづらいだろう。ということでちょっと大人ぶってこの操作を一般的に定義してみよう。
定義から、一段飛ばしは段上りであり、通常の上り方は
段上りである。名称と実際に上る段数のずれを修正しただけである。
ここまで考えたことを使うと、一般化した問題を簡潔に言い表すことができる。
なかなか面白そうな問題ではないか。初期値を求めるのは明らかに面倒なので、まずは漸化式から求めてみよう。
なかなか証明していて楽しい定理である。それと同時にやはり数学は具体例を考えることが重要だと身に染みてわかった。
そして漸化式は求められたので、数列を定義するのに必要な最後のピース、数列の初期値を求める。
初期値を求める前にの組み合わせ論的な性質について考えてみよう。すると次のことに気づける。
正直に言ってあまりいい言い方が思いつかないが、たとえば
初期値を求める。初期値はどこまで定めるべきか考える。が固定されていることに注目すると、それは
であることがわかる。
禁止行動の補題を適用すると初期値を求める問題からを求める問題に早変わりする。
ここまできてもつかみどころのない問題である。とりあえず新たに数列を定義する。
わからないときはとりあえず具体的に落とし込むのが重要だ。くらいまで値を求めてみよう。
するとがわかる。実際に場合の数を数えればわかることである。
ここで、あれっと思った人もいるだろう。次のことが予想できる。
どうにかしてこの予想を証明したい。ということで再び漸化式を立てる。をうまいこと分解して
を用いて書きたい。
すると次のような変形を思いつく。
そして思いつきにくい利用だがの漸化式を視点を変えて利用する。
なかなか見ない形の漸化式である。初期値は
であるとわかっているので、これで
が定義された。こういう解くのが難しそうな漸化式を見た時にやることは決まっている。当然数学的帰納法である。
累積帰納法を用いて示す。
これを等比級数の和の公式を使って変形すると、
この定理によりを定義する上で十分な初期値が求められて、考えていた問題は解決した。
これは
ここでトリボナッチ数列をひとつまみ
この数列の値を求めてみよう。するととなる
ん?
やんけ!
にわかに数列を定義したい気分になってきた。
と定義する
のときがフィボナッチ、
のときがトリボナッチ数列である。
ここまでの話の流れからして以下の定理が成り立ちそうである。
まず初めに初期値を求めてみよう。
この漸化式はの時に出てきたものと同一である。
はその定義により
に一致する。そして
がわかる。であるので
が成り立つ。
さて、数学的帰納法を用いて命題を証明しよう。のケースでは正しいことが上で確認できている。
のとき正しいとして、
のときを示そう。
であるので題意は示された
結局、階段の昇降の場合の数には数列が関わっていることがわかった。しかも上の添字だけ下の添え字をずらす、という非常に簡単な方法で、である。ありがとうフィボナッチ数列!
ちなみにこれに入試数学の一般化というタグをつけたのは京都大学で似たような問題が出されていたからである。確か連続して段上りをしてはいけないというルールのもとで、
段上りを使って階段を上るときの場合の数を求める問題だったような気がする。
は
を
から
までの自然数に順序を区別して分割するときの場合の数である。(唐突)ここまで階段の昇降にしか触れていなかったので、ちょっと実験してみよう。
階段を上ることは自然数を分割することだったのだ。今度から童心に帰りつつ、理学的に「今、自然数分割してるな〜」と思いながら階段を上ってみるのも良いかもしれない。