数ならぬ

理学系のこと、特に数学について書きます。雑学的な知識もまとめていく所存。

銀鏡反応の化学式

 アルデヒドは還元性を持つため、アンモニア性硝酸銀水溶液を還元し、銀鏡反応を起こす。これは定性的な性質であるが、もう少し定量的に性質を分析してみたい。すなわち、化学反応式を書きたい。

 アルデヒドに含まれるホルミル基\mathrm{-CHO}について\mathrm{C}の酸化数は+1である。これが酸化されることでカルボキシ基\mathrm{-COOH}となる。このとき、同じ\mathrm{C}の酸化数は+3に変化している。つまり、\mathrm{-CHO+H_2O\to-COOH+2H^{+}+2e^{-}}のように半反応式がかける。

 この半反応式を銀イオン\mathrm{Ag^{+}}の半反応式と組み合わせればよい。銀イオンは還元されるので、半反応式は\mathrm{Ag^{+}+e^{-}\to Ag}となる。電子の係数比を合わせてアルデヒドの反応式と足し合わせると\mathrm{-CHO+H_2O+2Ag^{+}}\mathrm{\to -COOH+2H^{+}+2Ag}

ファンデルモンドの二項係数畳み込み

 二項定理をうまく使うことで二項係数の畳み込みをついて考えることができる。

ファンデルモンドの畳み込み

二項係数を定義されない添え字の時、0であると拡張すると

{}_{p+q}\mathrm{C}_r=\displaystyle\sum_{i=0}^r{}_p\mathrm{C}_i{}_q\mathrm{C}_{r-i}

Proof

(1+x)^{p+q}を二通りの方法で展開する。そのまま二項定理で展開すると、

(1+x)^{p+q}=\displaystyle\sum_{k=0}^{p+q}{}_{p+q}\mathrm{C}_kx^k

が得られる。(1+x)^p(1+x)^qと見て展開すると

(1+x)^{p+q}=\Big(\displaystyle\sum_{i=0}^p{}_p\mathrm{C}_ix^i\Big)\Big(\sum_{j=0}^q{}_q\mathrm{C}_jx^j\Big)

 二つの式の右辺のx^rの係数は同じであるため、係数比較により

{}_{p+q}\mathrm{C}_r=\displaystyle\sum_{i=0}^r{}_p\mathrm{C}_i{}_q\mathrm{C}_{r-i}◽︎

斜方投射で一番遠くに飛ばせるのは何度?

 斜めに物体をぶん投げて、なるべく遠くに飛ばしたいとき、投げる速さも重要だが、それと比肩するのは角度である。どんなに速さが出ていても、極論真上に投げていては意味がない。

 では、結局どのくらいの角度で投げるのが一番飛距離が出るのだろうか。今回は力学的にこの問題を解決しようと思う。

 直感的には、投げる角度が45^{\circ}のとき、一番遠くに飛ぶと思われる。この直感は正しいのだろうか。

 原点の位置にボールを置き、x軸正の方向から反時計回りを正として角度\thetaを取る。0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}とすれば十分だろう。ボールに大きさがvで一定の初速度を\theta方向に与える。ボールの質量はmであり、ボールは質点とみなせるものとして、重力加速度はgとする。

 速度をx軸方向とy軸方向に分解すると、x軸方向の成分v_x=v\cos\thetay軸方向の成分v_y=v\sin\thetaが得られる。時刻tをボールに初速を与えた瞬間を0として設定する。加速度は-gなので、等加速度運動の公式に当てはめると

\begin{equation}
\begin{cases}
x(t)=vt\cos\theta\\
y(t)=vt\sin\theta-\dfrac{1}{2}gt^2
\end{cases}
\end{equation}

が得られる。ということでy(t)=0となる0ではないt

t=\dfrac{2v\sin\theta}{g}

であるため、この時刻までボールはx軸方向に移動できる。さて、この時刻をx(t)に代入すると

\dfrac{2v^2\cos\theta\sin\theta}{g}

が得られる。これは\thetaの関数とみなせるので、この関数の最大値を求めれば良い。\sin2\theta=2\cos\theta\sin\thetaであることを思い出すと、この関数は\dfrac{v^2\sin2\theta}{g}と書けるため、\theta=\dfrac{\pi}{4}のとき、最大値\dfrac{v^2}{g}を取る。

ヴィエトの公式

 先日の指数関数を因数分解し続けることで得られる公式と同様の手口で、\sin xの倍角の公式を使い続けて、次のような無限積の公式が作れる。

ヴィエトの公式
f\dfrac{\sin x}{x}x=0に連続に延長した関数とすると、f(x)=\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\cos\Big(\dfrac{x}{2^n}\Big)

Proof

\sin x=2\sin\Big(\dfrac{x}{2}\Big)\cos\Big(\dfrac{x}{2}\Big)n回用いることで

\sin x=2^n\sin\Big(\dfrac{x}{2^n}\Big)\displaystyle\prod_{k=1}^n\cos\Big(\dfrac{x}{2^k}\Big)

が成り立つことがわかる。ここで、x=0の場合には題意が自明に成り立つことを考慮してx\neq0とし、nは十分に大きいものとすると

\dfrac{\sin x}{2^n\sin\big(\frac{x}{2^n}\big)}=\displaystyle\prod_{k=1}^n\cos\Big(\dfrac{x}{2^k}\Big)

 両辺極限を取ると題意は示せる◽︎

 x=\dfrac{\pi}{2}を代入すると円周率をルートのみで計算する公式が導かれる

ヴィエトの公式の系
\dfrac{2}{\pi}=\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\cos\Big(\dfrac{\pi}{2^{n+1}}\Big)=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\times\dfrac{\sqrt{2+\sqrt{2}}}{2}\times\cdots

ガウス積分しよって誘われた時の対処法

 ガウス積分と呼ばれる非常に重要な積分がある。

ガウス積分の公式
\displaystyle\int_0^{\infty}e^{-x^2}\mathrm{d}x=\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}

 高校範囲でガウス積分は求値できる。なので、今回はその方法を説明する。

 有名な不等式としてe^x\ge1+xがある。これに-x^2を代入すると1-x^2\leq e^{-x^2}が、x^2を代入して逆数を取ればe^{-x^2}\leq\dfrac{1}{1+x^2}が出る。これらを合わせると

1-x^2\leq e^{-x^2}\leq\dfrac{1}{1+x^2}

 nを正の整数とする。0\leq x\leq1と定義域を制限して両辺をn乗すると、不等号の向きは保たれる。

(1-x^2)^n\leq e^{-nx^2}\leq\dfrac{1}{(1+x^2)^n}

 \displaystyle\int_0^1をつけてやっても大小は変わらない。

\displaystyle\int_0^1(1-x^2)^n\mathrm{d}x\leq\int_0^1e^{-nx^2}\mathrm{d}x\leq\int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}\mathrm{d}x

 y=\sqrt{n}xという置換を行うことで、真ん中の積分は

\dfrac{1}{\sqrt{n}}\displaystyle\int_0^{\sqrt{n}}e^{-y^2}\mathrm{d}y

に等しいことがわかるので束縛変数を取り直すと

\displaystyle\int_0^1(1-x^2)^n\mathrm{d}x\leq\dfrac{1}{\sqrt{n}}\displaystyle\int_0^{\sqrt{n}}e^{-x^2}\mathrm{d}x
\leq\int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}\mathrm{d}x

\sqrt{n}は正なので、かけても不等式の大小関係は変わらない。

\sqrt{n}\displaystyle\int_0^1(1-x^2)^n\mathrm{d}x\leq\displaystyle\int_0^{\sqrt{n}}e^{-x^2}\mathrm{d}x
\leq\sqrt{n}\int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}\mathrm{d}x

 最左辺の積分から何とかする。左辺を直接計算するのは馬鹿らしいので、x=\sin\thetaと置いてどうにかならないか試してみる。この置換によって積分区間は0\to\dfrac{\pi}{2}に変化する。

\displaystyle\int_0^1(1-x^2)^n\mathrm{d}x=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^{2n+1}x\mathrm{d}x

 これはウォリス積分である。n次のウォリス積分\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^nx\mathrm{d}xI_nと置くと、これはI_{2n+1}である。

 また、最右辺の積分はx=\tan\thetaと置くと良さそうである。そのように置換すると、積分区間は0\to\dfrac{\pi}{4}となり、被積分関数は簡単にできる。

\displaystyle\int_0^1\dfrac{1}{(1+x^2)^n}\mathrm{d}x=\int_0^{\frac{\pi}{4}}\cos^{2n-2}\theta\mathrm{d}\theta

\cos^{2n-2}\thetaは負にならないため、積分区間を延長しても、元よりも値が小さくなることはない。つまり、この積分はI_{2n-2}以下である。

 上の考察をまとめると、次のような良さげな不等式が得られる。

\sqrt{n}I_{2n+1}\leq\displaystyle\int_0^{\sqrt{n}}e^{-x^2}\mathrm{d}x\leq\sqrt{n}I_{2n-2}

 最左辺、最右辺の極限を求めるために必要なのが次の補題である。

ウォリスの公式
\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sqrt{n}I_n=\sqrt{\dfrac{\pi}{2}}

Proof

ウォリス積分の漸化式I_{n+2}=\dfrac{n+1}{n+2}I_nの両辺にI_{n+1}を掛けると、(n+2)I_{n+2}I_{n+1}=(n+1)I_{n+1}I_nが得られる。ここで、J_n=(n+1)I_nI_{n+1}と置くと、J_{n+1}=J_nより、定数列になる。J_0=\dfrac{\pi}{2}より、J_n=\dfrac{\pi}{2}である。よって、I_{n+1}I_n=\dfrac{\pi}{2(n+1)}

 ここで、被積分関数の大小関係によりI_{n+2}\leq I_{n+1}\leq I_nが成り立つので、全辺にI_{n+1}を掛けると

\dfrac{\pi}{2(n+2)}\leq I_{n+1}^2\leq\dfrac{\pi}{2(n+1)}

 n+1を全辺に掛けて最右辺の分母を払い極限を取ると、\displaystyle\lim_{n\to\infty}(n+1)I_{n+1}^2=\dfrac{\pi}{2}がわかる。(n+1)I_{n+1}は負でないため、\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sqrt{n+1}I_{n+1}=\sqrt{\dfrac{\pi}{2}}が導ける◽︎

 \sqrt{n}I_{2n+1}=\sqrt{\dfrac{n}{2n+1}}\sqrt{2n+1}I_{2n+1},\sqrt{n}I_{2n-2}=\sqrt{\dfrac{n}{2n-2}}\sqrt{2n-2}I_{2n-2}と変形して補題を適用することにより、最右辺と最左辺の極限はどちらも\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}であり、はさみうちの原理を用いて、

\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_0^{\sqrt{n}}e^{-x^2}\mathrm{d}x=\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}

という極限公式が得られる。e^{-x^2}が常に正であることを考慮すれば、これはガウス積分が求値できたことを意味する。

指数関数の因数分解

 x,yが正のとき、x-y=(\sqrt{x}-\sqrt{y})(\sqrt{x}+\sqrt{y})という因数分解を利用した等式が成り立つことは明らかであろう。また、\sqrt{x},\sqrt{y}も正なので、\sqrt{x}-\sqrt{y}も因数分解できる。このアイディアを指数関数に適用してみよう。

 すると、次のような公式が得られる。

\dfrac{e^x-1}{x}の無限積展開
\begin{equation}
f(x)=
\begin{cases}
\dfrac{e^x-1}{x}&x\neq0\\
1&x=0
\end{cases}
\end{equation}と定義する。このとき、f(x)=\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\dfrac{1+e^{\frac{x}{2^n}}}{2}である

 f(x)が連続関数であることは\displaystyle\lim_{x\to0}\dfrac{e^x-1}{x}=1であることからわかる。この無限積は先ほどのアイディアを下地にして証明可能である。

Proof

e^x-1を因数分解していくと、等式

e^x-1=(e^{\frac{x}{2^n}}-1)2^n\displaystyle\prod_{k=1}^n\Big(\dfrac{1+e^{\frac{x}{2^k}}}{2}\Big)

が成り立つことがわかる。x\neq0として、両辺を2^n(e^{\frac{x}{2^n}}-1)で割ってやると

\displaystyle\prod_{k=1}^n\Big(\dfrac{1+e^{\frac{x}{2^k}}}{2}\Big)=\dfrac{e^x-1}{2^n(e^{\frac{x}{2^n}}-1)}

が導かれる。右辺の極限は

\dfrac{e^x-1}{2^n(e^{\frac{x}{2^n}}-1)}=\dfrac{e^x-1}{\frac{e^{\frac{x}{2^n}}-1}{\frac{x}{2^n}}x}

と変形することで、\dfrac{e^x-1}{x}であると分かる。

 x=0のときは別途に調べることで等式が成立しているとわかる◽︎